JINKI 191 ライバルと言う関係

 タン、と足を弾ませたその時には、既に踏み込んでいる。

 ルイの足並みはまるで流れるようにして、赤緒とさつきのガードをすり抜け、跳ね上がってダンクシュートを見舞っていた。

 南が点数表を捲ってポイントを入れさせる。

JINKI 190 今宵、香りを纏って

 ふんふふーんと鼻歌混じりに《モリビト2号》のアイサイトを磨いていると、不意に声がかけられていた。

「青葉ー! こっちこっちー!」

「エルニィ? もう、どうしたのー? せっかくのお楽しみタイムだったのに……」

JINKI 189 絆の借用書

「それにしても……南さん、これじゃ片付かないですよ」

 赤緒は南の持ってきた大仰な荷物の振り分けを手伝っていた。

 思えば南の部屋に入るのは片手で数えるほどしかなく、どうして自分がその任を命じられたのかと言えば、今日は誰も彼も出払っているからであった。

JINKI 188 眩しい季節を迎えて

 居間でルイが教材を広げているのを目にして、赤緒は思わず絶句する。

「る、ルイさんが……勉強……?」

「何よ、赤緒。私が勉強しちゃ悪いって言うの?」

「い、いえ、そんなことは決して……。でも、ルイさんが積極的に勉強するなんて、それはとても……」

レイカル35 8月レイカルと縁日

「だから! 最強の虫はトンボだ! 何回言ったらわかるんだ、お前はー!」

 レイカルの物言いにカリクムが突っかかる。

「いーやっ! タガメだね! タガメの顎を見たことがないだろ? あれはすごいんだからな!」

JINKI 187 ガール・オブ・リヴィジョン3

 展開した《バーゴイル》部隊に対し、なずなは《ナナツーシャドウ》のコックピット内で総数を視野に入れる。

「数は七……小隊編成ってところですかねぇ……それで私に勝てるとでも?」

『潜り込んできた側がよく言える。盗人猛々しいとはこのことかな? ミス瑠璃垣』

 少年の声音になずなは《ナナツーシャドウ》へと逆手に握らせたリバウンドの小太刀を構えさせる。

JINKI 186 世界で二人だけの夜に

「あれ……ルイさん……?」

 さつきは本棚に向かってぐっと手を伸ばしている姿勢のルイを発見し、声をかけようとして憚られていた。

 なにせ――ここは図書室。

 大きな声は出せない。

レイカル34 7月 レイカルと海開き

「ヒヒイロ! 大変なんだ!」

 例の如く飛び込んできたレイカルに、ヒヒイロはまたか、と額を押さえる。

「……言っておくが、鍛錬しながらになるぞ。どうしたのじゃ、レイカル」

「ああ、それは……って、ウリカル?」

JINKI 185 柊神社の怪談話

「……そう、それはいつもと同じ、夜中過ぎだったんだ」

 ロウソクを囲んで一同に会したさつきとルイ、それに語り手のエルニィが情感たっぷりに口を開く。

「何か飲み物がないかなーって、台所に行こうとしたところ、だよ。聞こえてくるんだぁー、シャリシャリって音が。誰も居ないはずの柊神社の台所近くで……」

JINKI 184 アンヘルのおむすび戦争

「さーつき! 朝ご飯、まだー……って、何やってんの?」

 唐突に台所に押し入ってきたエルニィに、さつきは大慌てで調理していた代物を背後に隠す。

「た、立花さん? ……えっと、すぐに用意しますね」